家づくりの打ち合わせでは、「念のため」という言葉がよく出てきます。
念のため、もう一部屋。
収納は、少し多めに。
親が泊まりに来たときのために、和室も欲しい。
家は簡単に建て替えられるものではありませんし、大きなお金もかかります。あとから「ああしておけばよかった」と思いたくない。その気持ちは、よく分かります。
ただ、一つひとつの要望に、それぞれ専用の場所を用意していくと、家はどんどん大きくなります。
そうなる前に、その「念のため」の場所を、普段はどう使えるかまで考えてみたいと思っています。
例えば、親が泊まりに来るための部屋。
普段は子どもが遊ぶ場所として使い、泊まりに来たときだけ片づけて布団を敷く。家で仕事をしたり、洗濯物を畳んだりする場所として使うことも考えられます。
リビングの隣に設けて、普段は戸を開けて一体で使うなら、リビングそのものは少し小さくできるかもしれません。そこで仕事ができるなら、別に考えていた書斎は必要なくなるかもしれません。
一つの部屋の使い方を考えることが、ほかの部屋の広さや、そもそもその部屋が必要なのかを見直すことにもつながります。
もちろん、使い道をいくつも並べればいいわけではありません。
子どもが遊んでいる横で、落ち着いて仕事ができるのか。来客が泊まっている間、洗濯物はどこで畳むのか。同じ時間に使うのであれば、兼ねるのが難しい場合もあります。
誰が、いつ、どのように使うのか。そこまで暮らしを具体的に思い浮かべながら、検討していきます。
そうして一つの場所を考え直すと、別の場所も変わります。
書斎がなくなれば、その分を収納に回せるかもしれません。収納の位置が変われば、廊下を短くできるかもしれません。その結果、必要な使い方を残したまま、家全体を小さくできることもあります。
間取りは、部屋を一つずつ並べて終わりではありません。一つ変えるたびに、全体を見直す。その繰り返しだと思っています。
検討に検討を重ねた間取りは、ほかの人が見ると「なぜここにこの部屋があるんだろう」「どうしてこんな配置なんだろう」と思うこともあるかもしれません。
でも、そのご家族には、そうした理由がある。
帰宅する時間、家での過ごし方、持っている物、親が泊まりに来る頻度。打ち合わせで話してきたことが、一つひとつ間取りに反映されています。
図面だけでは分からなくても、そのご家族の暮らしを聞くと、なるほどと思える。そんな間取りがあっていいと思います。
もちろん、どれだけ考えても、将来すべてが思いどおりになるとは限りません。
仕事の仕方が変わったり、子どもの成長によって使う場所が変わったりすることもあります。
それでも、そのときにしっかり検討したことは、その後にも生きると思っています。
なぜその場所につくったのか。何と兼ねることを考え、何を優先したのか。その経緯があれば、想定と違う暮らしになったときにも、そこから次の使い方を考えられます。
だから、「何となく、あった方がいいかな」という要望も、そのまま形にする前に、もう少し一緒に考えたい。
話した結果、専用の部屋が必要なら、つくればいい。兼ねられるなら、ほかの部屋も含めて見直してみる。その積み重ねで、家の大きさも形も決まっていきます。
僕たちは小さな家を提案することが多いですが、最初から決めた広さに、ご家族の暮らしを押し込めたいわけではありません。
必要なことを一つずつ確かめ、使い方を考え、間取りを練り直す。
そうしてできた家は、誰にでも当てはまる間取りではないかもしれません。でも、そのご家族にとっては、一つひとつに理由のある、自分たちだけの特別な間取りになると思っています。