今年の住宅業界は、まさにてんやわんやの状況です。
4月からの4号特例縮小、省エネ基準適合義務化に加え、GX志向型補助金の開始と早期終了。確認申請も2~3か月待ちは当たり前、GX補助金も2か月ほどで打ち切りとなり、新築を検討していた方々は大きく振り回されたことでしょう。
GX終了後は長期優良住宅へ切り替える方や、来年度の補助金に期待する方も少なくありません。しかし、GX仕様に合わせて付加断熱や太陽光を盛り込んだ結果、オプション扱いとなりコストが上がってしまった方々も多いはずです。
安藤建築事務所でも、先が読めない状況により段取りが立てにくくなっています。地盤改良工事は混雑し、確認申請がいつ下りるか不透明な中では予約すら難しい。以前は土地契約の時点で設計スケジュールから完成までのおおよその目処が立てられましたが、今はまったく読めません。
来季の補助金についても「あるだろう」「例年ならこの時期だろう」といった“だろう”頼みで予定を組むしかなく、実際には追加要件が増えたり、補助額が減ったりする可能性も否めません。この不確実さは、家づくりの大きなハードルになっています。
本来、補助金は「取れればラッキー」程度に考えるのが理想です。ですが、ここまで土地・建物の価格が高騰すると「補助金ありき」の考えも現実的になってきます。お客様からも「土地込みで5,000万~5,500万円は必要と言われた」という厳しい声を多く耳にします。県外の同業者からは「いずれ新築住宅は消滅するだろう」という悲観的な見方すら出ています。特に石川県は、隣県の富山・福井に比べて土地価格が高く、さらにハードルが上がっています。
個人的には、20代夫婦で5,000万円超の住宅ローンは、親の援助がない限り借りられたとしてもお勧めしません。
世帯年収700~800万円あれば借入は可能ですが、子育て期に夫婦共働きが維持できるでしょうか。奥様がパートになった場合、あるいは金利が上がった場合に余裕をもって返済できるでしょうか。
借入額による返済負担は大きいです。
金利上昇時にはこの負担はさらに重くなります。月1.5~3万円あれば、子どもの習い事や家族旅行、奥様の美容に充てることもできます。返済に全振りするのは現実的とは言えません。
私自身、20代で家を建てた際には調子に乗って好きなことを詰め込みました。しかし12年経った今振り返ると「無駄が多すぎた」と痛感しています。無駄はお金だけでなく、間取りや動線にもありました。その結果、ランニングコストもメンテナンスコストも膨らみました。
家を建てるとき、多くの方は「広く」「好きなことを叶えたい」と強く望みます。しかし、実際に住んでみると、当初は重要だと思っていたことが、後から振り返るとどうでもよくなっていることも少なくありません。
だからこそ私は、お客様には「一見地味だけれど、あとから効いてくるボディブローのような提案」を大切にしています。目先の派手さではなく、将来の暮らしにじわじわ効いてくる選択肢を、一緒に考えていきたいと思っています。