家づくりを取り巻く環境は、
この数年で大きく変わったように感じます。
性能競争が激しくなり、価格も上がり、
SNSには毎日のようにトラブルの投稿が流れています。
棟数は減っているのに人手は足りず、
慌ただしさだけが増していく――
そんな矛盾を、私自身も現場で強く感じています。
けれど、これは建築業界だけの話ではありません。
どんな仕事の現場でも、
本来の目的とは少し離れたところに時間が取られ、
“忙しいのに豊かではない”
そんな空気が広がっているように思います。
学校を見ても、子どもの数は減っているのに、
職員室の灯りは夜遅くまで消えません。
社会全体が、どこか余裕を失いつつあるのかもしれません。
だからこそ、今一度問いたくなるのです。
家づくりで、本当に大切なことは何なのか。
お客様にとって、何がいちばんの安心になるのか。
効率化や合理化だけを追えば、
もっと簡単に仕事は回せるのかもしれません。
打ち合わせを減らし、帯同をなくし、
画面越しにすべてを完結させるやり方もあります。
実際、その流れはどんどん強まっています。
けれど、どうしてもそこに違和感が残ります。
家は暮らしの器であり、
家族の未来を包む場所です。
その大切な空間をつくる時間を、
“効率”だけで説明してしまって良いのだろうか、と。
図面を丁寧に読み込み、
基礎や構造の整合性を一つひとつ確かめ、
見えない部分にこそ手間をかける。
ショールームでは、
迷うところも、楽しいところも、
お客様と一緒に体感しながら選んでいく。
そうした積み重ねは派手ではありませんが、
確かに家の安心を支える仕事です。
時代がどれだけ便利になっても、
変えてはいけないものがあります。
そして、変えてはいけないものほど、
手間がかかり、時間がかかり、
効率とは遠いところにあります。
それでも私たちは、その地道な部分を
これからも大切にしていきたいと考えています。
家づくりの本質は、
まさにその中にあると信じているからです。
世の中の流れが速くなればなるほど、
丁寧に向き合うことの価値は増していきます。
一棟一棟に心を配り、
安心して暮らしていただくための作業を、
惜しまず積み重ねていく。
その姿勢に共感してくださる方々と、
これからも誠実な家づくりを続けていけたら。
そんな思いで、今日も図面と向き合っています。
今日も夜な夜な基礎図面のチェックです。

一発勝負の基礎は絶対にミスは許されません。