―「あたたかい家」と「結露しない家」は、実はちょっと違う話―
1. 断熱と気密って、何のためにあるの?
家の「断熱」と「気密」は、どちらも快適で長持ちする家に欠かせない仕組みです。
断熱は、家の中の温度を逃がさないための“魔法瓶”のような役割。
気密は、壁や床のすきま風をなくして、空気をコントロールする仕組みです。
この二つがしっかりしていると、少ないエネルギーで家の中を快適に保てます。
でも、どちらかが弱いと「壁の中で起こる結露」という、見えないトラブルが起きることがあります。
2. 壁の中で起こる“見えない結露”とは?
冬、窓ガラスに水滴がついた経験はありませんか。
あれと同じことが、実は壁の中でも起こることがあります。
たとえば、外が0℃、部屋の中が20℃で湿度60%あると、
壁の途中に「10℃くらいまで冷える場所」ができます。
そこに空気中の水分が触れると、水滴(=結露)が発生します。
これが何年も続くと、壁の中がジメジメして、木が腐ったり、カビが生えたりしてしまいます。
3. 断熱材の種類で、“乾き方”が変わる
どの断熱材でも「結露のきっかけ」は同じです。
でも、「もし湿気が入ってしまったときに、どれくらい乾きやすいか」が違います。
①ウレタン吹付断熱(発泡スプレータイプ)
壁の中に発泡ウレタンを吹き付けて、すきまなく埋めるタイプです。
断熱性能はとても高く、気密も取りやすいのが特徴です。
ただし、水を通さない性質があるため、
もし湿気が入りこんでも外に逃げにくいという弱点があります。
つまり、「結露が起きたら乾かない構造」になりやすいのです。
②グラスウール断熱(ふわふわ綿タイプ)
ガラス繊維でできた綿のような断熱材を、袋に入れて壁に詰めていくタイプです。
湿気を通す性質があるので、
きちんと防湿シートと通気層を組み合わせれば、乾きやすい壁になります。
ただし、施工の丁寧さが命です。
少しでもすきまがあると性能が落ちやすいため、職人の腕が試されます。
③プレウォール工法(パネル式の壁)
工場で「構造・断熱・防湿」を一体化してつくる、完成した壁パネルを現場で組み立てる工法です。
精度が高く、性能も安定しやすいのがメリットです。
しかし、断熱材(ウレタン)と合板がぴったりくっついているため、
もし水や湿気が入ると乾きにくい構造になってしまいます。
雨の侵入や、わずかな気密のずれがあると、
壁の中でカビが発生することもあるので注意が必要です。
4. 結露が起きるとどうなるの?
結露が続くと、見えない場所でいろいろな問題が起きます。
・木材が黒ずむ(カビ)
・壁の内側の板が膨らむ
・断熱材が湿って性能が落ちる
・シロアリが寄りやすくなる
しかも、これらは家の中からは見えません。
外壁を壊して初めて気づくケースがほとんどです。
5. 結露を防ぐための三つのポイント
①湿気の逃げ道をつくる
外壁の裏には「通気層」と呼ばれるすきまを作り、湿気を外に逃がせるようにします。
②室内側で湿気をコントロールする
「防湿シート」や「可変透湿シート」を使い、
冬は湿気を止め、夏は逃がす。
まるで呼吸する壁のようにするのが理想です。
③すきまをなくす(気密)
サッシまわり、コンセント、天井のつなぎ目など、
少しのすきまが大きな差になります。
どんな断熱材でも、“気密の施工精度”が性能を決めます。
6. まとめ:「結露しない家」は“乾ける家”
大切なのは、断熱材の種類よりも、
「もし湿気が入っても乾ける構造にしておくこと」です。
ウレタンは“閉じる家”。
グラスウールは“呼吸する家”。
プレウォールは“仕上がった家”。
それぞれに良さと弱点があります。
家づくりでは、「どんな断熱材を使うか」よりも、
「どうやって湿気を逃がすか」を一緒に考えていくことが大切です。
これが、長く快適に暮らせる家をつくるための、本当の“断熱と気密”の話です。