最近、お客様と家づくりのお話をしていると、家族の将来に対する考え方が、以前とは少し変わってきたように感じます。
ひと昔前であれば、家を建てるとなると、
「子どもは2人くらいかな」
「じゃあ、子ども部屋を2部屋つくろう」
そんなふうに、ある程度決まった未来の家族像を思い描き、そこから間取りを考えることが当たり前だったように思います。
でも最近は、
「もし子どもができたら、この部屋を使えばいいんじゃない?」
というくらい、良い意味で軽やかに将来を考えている方が増えました。
中には、「子どもを持つことは考えていません」と、はっきりお話しされる方もいます。
どちらが良い、悪いという話ではありません。
家族のかたちも、人生の選択も、以前よりずっと多様になってきたのだと思います。
だからこそ私たちは、これからの家づくりでは、「未来を決めすぎないこと」も大切なのではないかと考えています。
安藤建築事務所では昔から、用途を限定しすぎず、フレキシブルに使える空間を提案してきました。
なぜなら、家は完成した瞬間だけのものではないからです。
現在、5年後、10年後、20年後。
その間に家族構成が変わることもあれば、子どもが成長し、仕事や趣味、生活スタイルが変わることもあります。
それなのに、家を建てるその瞬間の想像だけで、
「ここは子ども室」
「ここは寝室」
「ここは書斎」
と、何十年先まで部屋の役割を決めてしまう必要があるのでしょうか。

今は家族が自由に使える大きな空間。必要になったときに仕切ることで、将来は個室として使うこともできます。
家を設計するとき、安藤建築事務所が大切にしている考え方があります。
できるだけ長い期間、「家の稼働率80%以上」の状態をつくること。
もちろん、これは面積や時間を計測して算出する数字ではありません。
せっかくつくった空間が、長い年月の中で「ほとんど使われない場所」になってしまうことを、できるだけ少なくしたい。
そんな設計に対する私たちの感覚を表した言葉です。
例えば、まだ子どもがいないご夫婦が、
「将来、子どもが2人できるかもしれないから」
と、最初から2つの子ども室をつくったとします。
もちろん、その未来が訪れるかもしれません。
でも、子どもが生まれ、成長し、実際に自分の個室を必要とするようになるまでには、何年もの時間があります。
その間、将来のためにつくった部屋がほとんど使われないのであれば、少しもったいない。
それなら、その空間を**「今の暮らしに必要な場所」として使えばいい。**
それが私たちの考え方です。
例えば、将来子ども室になるかもしれない場所にも、今はあえて壁をつくらない。
そうすれば、家族みんなで使える広々としたフリースペースになります。
本を読んだり、子どもが遊んだり、趣味を楽しんだり。
壁がないことで視線が抜け、家全体に広がりを感じさせてくれることもあります。
そして、本当に個室が必要になったときに仕切ればいい。

くつろぐ場所、子どもの遊び場、ときには寝室。ひとつの場所に、ひとつの役割だけを与えない。
これは、子ども室だけの話ではありません。
今は夫婦の寝室として使っている部屋が、将来は子ども室になってもいい。
タタミスペースが、ある時期には寝室になってもいい。
子どもが巣立った後の部屋が、書斎や趣味室になってもいい。
部屋の名前に、暮らしを合わせる必要はありません。
暮らしが変われば、部屋の役割も変わればいいのです。
将来の変化に対応できる空間だからといって、それまで使わずに待っている必要はありません。

今は空間に高低差と楽しさを生み出すスキップフロア。将来、個室が必要になれば仕切って使うこともできます。
例えば、スキップフロア。
将来は壁を設け、居室として使えるように計画しておく。
でも今はオープンにしておくことで、上下階の視線がつながり、家族の気配を感じられる場所になります。
高低差によって空間に変化が生まれ、家そのものを楽しくしてくれる場所にもなります。
つまり、将来のために残した「余白」は、決して使われていない空間ではありません。
将来に備えながら、今の暮らしにもきちんと価値を生み出す。
私たちは、そんな設計を大切にしています。
家づくりでは、
「将来のことまで考えて間取りを決めましょう」
と、よく言われます。
もちろん、私たちも将来を考えることはとても大切だと思っています。
ただ、
未来を考えることと、未来を決めてしまうことは違います。
子どもができるかもしれない。
できないかもしれない。
一人かもしれないし、二人かもしれない。
働き方が変わるかもしれない。
新しい趣味ができるかもしれない。
家族との暮らし方そのものが変わることだってあるかもしれません。
20年後の人生を、今すべて決めることはできません。
だからこそ、家の方に「変われる余地」を残しておけばいい。
現在は、現在の暮らしに一番いい使い方をする。
5年後には、5年後の使い方。
10年後には、10年後の使い方。
そして20年後には、また違った使い方をする。
人が家に合わせて暮らすのではなく、家がその時々の暮らしについてくる。
そうすることで、使われない部屋をできるだけつくらず、家全体の稼働率を高く保っていく。
そして何より、まだ分からない未来のために、今の暮らしの楽しさや、空間の広がりを犠牲にしない。
子ども室は、ずっと子ども室である必要はありません。
寝室も、ずっと寝室である必要はありません。
その時々の暮らしに合わせて、空間の役割が変わっていけばいい。
未来のために、今を犠牲にしない。
そして未来が変わったときには、家も一緒に変わればいい。
それが、安藤建築事務所が昔から大切にしてきた家づくりの考え方です。