コンパクトな家づくりを考えていると、時に「矛盾」に気づくことがあります。
お客様からもよくいただくご要望のひとつが、「生活の機能はすべて1階で完結させ、2階には子供室だけを置きたい」 というプランです。
一見すると合理的に思えますが、実はコストや効率の面では少し不利になることがあります。
子供室だけを2階に配置する場合、必ず階段が必要になります。
つまり、階段とホールだけで 合計3〜3.5坪 の面積が必要になります。
階段下を収納に活用しても、実質3坪前後は“ロス”として残るのです。
たとえば延床28坪の二階建てと、25坪の平屋を比べるとどうでしょう。
数字上は3坪の差があっても、実際に使える広さはほとんど同じ。
しかも建築コストは、28坪の二階建てより25坪の平屋の方が安くなる ケースが多いのです。
もちろん平屋は動線が長くなりがちなので、間取りの工夫は欠かせません。
ですが、「一部だけ二階を設ければコストダウンになる」と考えると、逆にコスト増につながることもあるのです。
私が一部二階を計画する場合は、単に階段を設けるのではなく、勾配天井に合わせて階段を組み込み、なるべく平屋に近い形 にしています。
そして、もし迷っている方には「思い切ってその3坪を削減し、平屋プランを選ぶ」という選択肢も提案しています。
実際に安藤建築事務所でも、20坪の平屋が完成し、現在は23坪の平屋を建築中です。
広さの感覚をそのままに、延床面積だけを削ることは十分に可能です。
小さな平屋の家づくりには、まだまだ大きな可能性があります。
数字だけにとらわれず、「本当に広く使える住まい」 を考えることが、賢い家づくりにつながるのです。