家の“気密性能(C値)”という言葉を聞くと、
「冬に暖かく、夏に涼しい快適な家」というイメージを持たれる方が多いと思います。
たしかに、気密が高い家は冷暖房効率が良く、室内の温度差が少なく、
どの部屋にいても穏やかな空気を感じられます。
そうした快適性は、気密性能がもたらす大きな恩恵のひとつです。
けれど――私たちがC値0.1という極めて高い水準を目指すのは、
「快適に暮らすため」だけではありません。
むしろ、家そのものを長く守るため。
気密は、構造体を湿気や劣化から守る“見えない鎧”のような役割を果たすのです。
C値とは、家にどれくらいのすき間があるかを示す数値です。
数字が小さいほどすき間が少なく、外気の出入りが少ない家ということになります。
一般的な住宅では、実際の測定値が 1.0〜2.0 程度のケースが多く、
0.5を下回る家は全国でもごくわずかです。
その中で、C値0.1というのはほとんど空気の漏れを感じない領域。
職人の精度と設計の整合性が完璧に噛み合わなければ実現できない、
非常に繊細で誠実な家づくりの結果です。
気密が甘い家では、冬の暖かい空気が壁の中に少しずつ入り込み、
冷たい外壁側で冷やされて結露(水滴)が発生します。
これを「壁体内結露(へきたいないけつろ)」と呼びます。
壁の中で結露が続くと、木材が腐ったり、断熱材が湿って性能を失ったり、
やがて構造体そのものの寿命を縮める原因となります。
つまり、気密を高めるというのは――
**“家を湿気から守るための最初の防衛線”**を築くこと。
見えない部分で家の寿命を左右する、極めて重要な性能なのです。
「C値0.3で十分」「0.5でも問題ない」
──そう言う会社もあります。
しかし、気密性能は完成した瞬間が“ピーク”であり、
その後は時間とともに必ず少しずつ衰えていくことを私たちは知っています。
木材の乾燥や温度変化、地震などのわずかな揺れ、
年月による部材の伸縮。
それらが少しずつすき間を生み、気密はじわじわと低下していきます。
だからこそ、私たちは最初から限界まで高めておく。
C値0.1を目標とするのは、10年、20年経っても性能を維持し、
家が快適で、健全な状態を長く保てるようにするためです。
つまり、気密の寿命を最大限に伸ばすための設計思想なのです。
C値0.1という数字は、他社と比較するためのものではありません。
壁の中を乾いた状態で保ち、
構造体に無理なストレスをかけず、
50年先まで家が健康であり続けるための「基準点」。
それが、私たちがC値0.1にこだわる理由です。
壁の中、床の下、天井の裏。
お客様からは見えない場所にこそ、職人の丁寧な仕事があります。
そこにあるのは、「数字を競う家づくり」ではなく、
“家を守る”ための技術と誠実さ。
その積み重ねが、
「冬も結露しない家」「長く快適に暮らせる家」
を支えています。
C値0.1という数字の裏には、
「見えないところまで丁寧に造る」という信念があります。
誰かと競うためではなく、
家族の暮らしと、家そのものの命を守るために。
私たちは今日も、
C値0.1を目指す理由を胸に、誠実な家づくりに向き合っています。