最近、「住宅版残クレ」や「残価設定住宅ローン」という話題を目にするようになりました。
将来の住宅価値をあらかじめ設定し、その価値を差し引いて住宅ローンを組むという考え方です。
私はこの話を聞いたとき、「住宅の価値とは何だろう」と改めて考えさせられました。
現在の住宅市場では、建物の価値は築年数によって大きく左右されます。
築10年、築20年、築30年。
査定をする際も、まずは築年数が基準になります。
もちろん年数による劣化はあります。しかし本当にそれだけで住宅の価値を判断して良いのでしょうか。
例えば、築20年の住宅が2棟あったとします。
片方は気密測定も行われておらず、断熱性能も分からない住宅。
もう片方は建築時に気密測定を実施し、断熱性能や耐震性能が明確に記録され、定期的なメンテナンスも行われている住宅。
どちらも築20年です。
しかし、本当に同じ価値なのでしょうか。
車であれば走行距離や整備履歴によって価値が変わります。
中古車を購入する際に年式だけを見て判断する人はほとんどいません。
ところが住宅は今でも築年数という非常に大まかな指標で評価されることが少なくありません。
本来であれば住宅も同じです。
どのような材料が使われているのか。
どのような性能を持っているのか。
どのような施工がされているのか。
どのようなメンテナンスが行われてきたのか。
これらを総合的に評価して初めて、本当の価値が見えてくるはずです。
特にこれからの住宅は性能差が非常に大きくなっています。
断熱性能や気密性能の違いは、住み心地だけでなく光熱費や健康、将来の維持費にも影響します。
しかし、その価値はまだ十分に市場へ伝わっているとは言えません。
私は今後、住宅の価値を評価する基準は「築何年か」から「どのような住宅か」へ変わっていくと思っています。
そのためには住宅の性能や履歴を可視化する仕組みが必要です。
気密測定結果。
断熱性能。
耐震性能。
メンテナンス履歴。
実際のエネルギー使用量。
こうした情報が当たり前に残り、誰もが確認できるようになった時、初めて住宅は正当に評価されるようになるのではないでしょうか。
住宅版残クレが普及するかどうかは分かりません。
しかし、その議論の先にある「住宅の価値をどう評価するのか」というテーマは、これからの住宅業界にとって非常に重要だと思います。
築年数だけでは測れない価値がある。
その価値をどう見える化し、次の世代へ引き継いでいくか。
これからの住宅づくりに求められているのは、そんな視点なのかもしれません。