住宅価格が上がり、家づくりのご相談でも、予算に対する不安を伺うことが増えました。
希望していた広さでは予算に合わず、建物をコンパクトにすることを検討する。お客さまにとっては、妥協のように感じられる選択かもしれません。
ただ、実際にプランを考えていると、小さくすることが必ずしもマイナスではないと感じます。広さに限りがあるからこそ、一つひとつの場所について、より深く考えるようになるからです。
私はプランをするときに、半畳の広さまで吟味します。寸法についても、15センチの違いを検討します。
ここはもう少し狭くできないか。その分、こちらに広さを持たせた方が使いやすくならないか。家具を置いたときにどうなるか、人が通るときに不便はないか。
そこで暮らす姿を想像しながら、間取りを調整していきます。
建物を1畳、1坪小さくするだけでも、工事費を抑えることにつながります。
ただ、まとまった広さを一度に削ろうとすると、どこかに無理が出ることもあります。それぞれの場所で数センチ、数十センチの工夫を重ね、その積み重ねによって、全体で1坪、2坪の削減が見えてきます。
いつも、その1坪、2坪との戦いです。
もちろん、狭くすることを優先して、暮らしにくくなってしまっては意味がありません。
必要なところには、きちんと広さを確保する。そのうえで、配置や空間のつなぎ方を工夫し、使いやすさや広がりをつくっていく。コンパクトな家ほど、こうした設計の工夫が大切になると考えています。
そして、家をコンパクトにするメリットは、建築費だけではありません。
分かりやすいところでは、掃除をする面積が少なくなります。床に掃除機をかけたり、拭いたりする日々の手間が減ることは、暮らしの負担を軽くしてくれます。
同じ断熱・気密性能で考えれば、冷暖房する空間が小さい方が、必要なエネルギーも抑えやすくなります。間取りや空調計画も合わせて考えることで、快適さを保ちながら、光熱費の負担を減らすことにつながります。
将来のメンテナンスも同じです。建物の形状や仕上げにもよりますが、屋根や外壁の面積を抑えられれば、補修や塗り替えなどの対象も少なくなります。
建てるときの費用に加えて、毎日の掃除や光熱費、何年か先の修繕まで。家を小さくすることで、住んでからの手間や支出も抑えられる可能性があります。
価格高騰がなければ、ここまで面積を吟味する機会は、今より少なかったかもしれません。
予算が厳しくなったこと自体は、喜ばしいことではありません。ただ、その条件があるからこそ、設計に工夫を凝らし、結果として暮らしやすさや管理のしやすさにつながっている面もあると思います。
最初は予算のための選択でも、住んでみて「この大きさでよかった」と感じられる。それは、妥協という言葉だけでは表せない価値ではないでしょうか。
家も、大きさや部屋数といった量から、日々の暮らしの質へと、価値の置き方が変わってきているように感じます。
家は小さく、設計は深く。
半畳、15センチまで吟味しながら、そのご家族にとって、ちょうどよい住まいを考えていきたいと思います。